家族信託の開始と終わり
家族信託はいつから始まり、どのような時に終了するのでしょうか?
信託の開始
①契約で始まる信託は「契約した時」から効力を生じます。
②遺言信託(遺言で信託を設定する信託)は遺言の効力が生じる時、
即ち遺言作成者の死亡時に効力が生じます。
③自己信託であれば、公正証書作成時に効力が生じます。
開始時期に条件をうけることの是非
信託の開始時期は上記によるのが原則ですが、
「親がまだ元気なので、親が認知症になったら
信託が開始できるような条件を契約書に入れたい」と
いうニーズがあるのも確かです。
信託契約で「信託契約は委託者(親)の判断能力が低下
した時に発動する」旨を定めることは可能です。
ただ、判断能力の低下や認知症になった時などは
客観的に判断できませんし、どの程度の状態に
なった時に信託をスタートさせるのか不明です。
医師の診断時・成年後見の申立てがされた時に
契約が発効するという内容
医師の診察や成年後見の申立てを行うことは
恣意的にできますので、発効時期としては
不適切です。
契約の発効に際して、条件をつけることは
家族信託の開始時期が不明確になることから
行うべきではないと思います。
信託が終了する時
信託が終了する事由は以下のように
定められています(信託法163条以下)。
- 当事者間の合意
- 信託の目的の達成又は不達成
- 受託者が受益権の全部を固有財産で保有する状態が1年間継続したとき
- 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
- 信託が併合されたとき
- 信託財産の破産手続開始の決定があったとき
1年ルールに注意!
上記の終了事由のうち以下の2つについては、1年の猶予期間が
設けられています。
受託者が受益権の全部を固有財産で保有する状態が1年間継続したとき
受託者と受益者が同じ状態のままだと1年間で信託は終了します。
「受益者のために財産管理を行う受託者」と「受益者」が同一人物だと
受益者の生活を守る信託の趣旨と相容れないからです。
1年以内に新しい受託者に変わるか、受益権の一部を譲渡するなど、
対処することが必要になります。
受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
受益者のために信託財産を管理する受託者がいなくなると、
信託の仕組みの運用ができなくなるからです。
そのような事態を防ぐために、契約書で受託者がいなくなる時に
備えて予備的な受託者を定めておくことが重要です。