家族信託すれば遺留分は関係ない!?
家族信託を活用することで、相続人の遺留分を侵害する
財産承継がされても、遺留分の請求はされないのでしょうか?
遺留分とは?
遺留分とは兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された最低限度の相続分
のことです(民法1028条)。
相続人の最低限度の財産権を保護するためのものです。
※遺留分割合
配偶者・直系尊属(子・孫など)⇒相続財産の2分の1
直系尊属(父母など)⇒相続財産の3分の1
直系尊属(父母など)⇒相続財産の3分の1
遺留分の対象になるのか?
遺留分の対象になるか否かは、まだ判例もなく、はっきりしませんので
考え方は分かれています。
遺留分の対象にならない説
①信託法は民法の特別法である。特別法は一般法に優先するので、
民法の制度である遺留分の対象にならない。
民法の制度である遺留分の対象にならない。
②信託法において受益権の移動は「順次取得」「以前の受益権は消滅し、
新たに発生した受益権を取得する」のどちらかである。
「新たに受益権を取得する」場合、相続で取得するのではないので、
遺留分は発生しない。
遺留分の対象になる説
①遺留分は相続人の最低限度の財産を保護するためのものである。
信託を活用しても相続人の権利を奪うことは許されない。
信託を活用しても相続人の権利を奪うことは許されない。
②亡くなった人の意思に基づく財産の承継という点では
遺贈や贈与と変わらない。
③民法では、相続人の遺留分をなくすには廃除しかない。
廃除は家庭裁判所の審判が必要であり、かなり厳格な手続きである。
当事者間の信託で遺留分を潜脱できるのは不当だ。
なお、平成30年9月12日東京地裁の裁判例では、事案判断の前提部分として
遺留分の適用を肯定してます。
遺留分の有無より大切なことは
そもそも、家族信託を活用する際は、「家族全員が同意・納得して始める」
ことが大前提となります。
家族全員が納得して始める信託では、委託者(親)の死亡後に
相続人間で争う可能性はかなり少ないので、
遺留分の有無に関して重要性は高くありません。
また、遺留分を考慮したうえで信託の設計を行うことが基本ですので、
仮に遺留分が肯定されることになっても問題はありません。