受益者代理人の選任は不可欠!
家族信託による財産管理を行うにあたり、
受託者と同様にとても重要な役割として
受益者代理人がいます。
受益者代理人を選任するかどうかは、
信託法では「任意」となってますが、
家族信託を活用する場合には、
必ず選任することをお勧めします。
受益者代理人の役割
受益者代理人は、受益者の権利に関する
一切の権限を行使できます。
受益者(受益者代理人)の権利として
主に以下のものがあります。
- 信託事務の状況報告の請求
- 帳簿などの閲覧請求
- 受託者の辞任の同意
- 信託の変更
- 受託者の行為差止請求
ただ、受益者代理人が権限を行使すると
受益者本人は、受託者を監督する権利を除き
自分で権利行使することができなくなります。
契約の定めが必須
信託契約書の中で、受益者代理人を選任する旨
定めていなければ、あとになって受益者代理人の
選任をすることはできません。
契約時に適切な人物がいない場合は、
受益者代理人の選任方法を定めておくだけでも
構わないので、受益者代理人の規定を定める
ことは必ずしておくべきでしょう。
第三者の専門家は受益者代理人で就任できるのか?
弁護士や司法書士などの専門家が受益者代理人に
就任することは、信託法では制限がありません。
信託を組成した専門家が受益者代理人に
就任するケースも考えられますが、
受益者代理人に専門家が就任するのは
避けるべきです。
受益者代理人は、信託契約の変更や終了にも
関与できるので、とても強い権利を持ってます。
受託者が子ども・受益者代理人が専門家として、
信託の変更を協議する場面で対等な協議は
期待できません。
家族内での財産の管理・承継を図る家族信託に
第三者が介入することは家族信託の趣旨と
相容れないと考えられます。
契約の変更・終了の場面で重宝
信託法の規定では契約の変更、終了について
契約の変更は「委託者・受益者・受託者の合意」
信託の終了は「委託者・受益者の合意」で行う
ものとされています。
委託者=受益者であるのが通常ですので、
受益者(委託者)が認知症になれば、
変更・終了ができなくなります。
受益者代理人を選任することで、
受益者(委託者)が認知症になっても
受益者の代わりに受益者代理人が受託者と
ともに契約の変更などを行うことが
可能になります。
成年後見人による信託の終了を防ぐ
受益者代理人を置いていない場合、受益者が
認知症になり、弁護士などの専門家が
受益者の成年後見人になれば、専門家が
主導して信託を終了することも考えられます。
専門家の成年後見人と一般人の受託者が
対等な立場で信託の変更等について
協議することは期待できません。
成年後見人が管理する財産が多ければ、
成年後見人の報酬も増えるのが一般的なので、
報酬を高くもらいがために、成年後見人が
強引に信託を終了させないとも限りません。
せっかく、家族で話し合って、財産の管理や
承継について決めたものが、第三者によって
反故されることになります。
そのようなことを回避するためにも
家族が受益者代理人に就任することで、
「受託者と受益者代理人」で契約の変更ができ、
成年後見人の関与を排除することができます。