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受益者の死亡で信託を終了させるか?

家族信託の契約に基づき、受託者による財産管理は
いつまで続くのかは、信託の目的や家族状況によって
適切な契約をもたらすことになります。

当初の受益者死亡により家族信託が終了する

信託の目的が「委託者(受益者)の
認知症による財産凍結を防止する」こと
である場合、委託者(受益者)の死亡後、
信託を継続する意味がないので、委託者
(受益者)の死亡により信託を終了させる
ことも可能です。

生前の財産管理の手段としてのみ活用する
パターン
です。

委託者(受益者)が死亡しても、次の受益者のために
信託を継続させる(受益者連続型信託)

委託者(受益者)が死亡により財産を取得する相続人が
認知症だったり、精神的な障がいがあったり、未成年者
など、自分自身で適切な財産管理ができません。

その結果、相続人が財産を取得したと同時に、
財産が凍結されることになります。

そのようなケースでは、財産を承継する相続人
(次順位の受益者)のために、信託を継続させて、
受託者による財産管理を行う必要があります。

委託者(受益者)が死亡しても、新たな受益者の
ために継続する信託を「受益者連続型信託」と
言います。

受益者連続型信託のメリット
「生前の財産管理」「二次・三次の財産承継の指定」
が可能になる。

財産を配偶者・子・孫などへ承継させる方法として
「遺言」がありますが、遺言は以下の点について
対応できません。

①生前の財産管理ができない

遺言は作成者が亡くなって初めて効力が生じますので、
作成者の生前には何の効果もありません。

遺言書で財産を承継する予定の相続人が
作成者の代わりに財産を管理することは
当然できません。

一方、信託を継続させることで、受託者による
財産管理が継続するので、委託者(受益者)の
財産管理の能力に心配は不要です。

②2世代・3世代先の次の財産承継ができない

遺言書による財産承継は、一代限りです。
遺言書作成者から直接に財産を承継する分のみです。

相続人が財産を承継した時点で、財産の所有者は
相続人に移りますので、所有者の相続人が
自分の好きなように管理・処分できるからです。

一方、受益者連続型信託では、当初の受益者に
限らず、契約で定める限り、次順位及びそれ以降の
受益者に財産(受益権)を引き継がせることが
可能です。

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生前の財産管理 二世代・三世代の財産承継
遺言 対応できない 対応できない
家族信託 対応可能 対応可能

受益者連続型信託の注意点1
遺留分との関係

承継する財産(受益権)について、遺留分は
いつの時点で判断するのか?

受益権も遺留分の対象として、受益権連続型信託の場合、
遺留分の請求はいつの時点で行うことになるのでしょうか?

受益者連続型信託の場合、次順位受益者に
限らず、それ以降の受益者(第3受益者)も
当初受益者から直接に権利(受益権)を取得します。

第3受益者は、第2受益者から受益権を取得するわけでは
ないのです

遺留分についても、当初受益者死亡時を基準とします。

当初受益者:父親
第2受益者:母親
第3受益者:長男
の場合、当初受益者の父親死亡時において
第2受益者である母親は、自分の死亡を終期とする
存続期間が不確定な受益権を取得します。

第3受益者である長男は、第2受益者の母親の死亡を
始期とし、自分の死亡を終期とする、存続期間が
不確定の受益権を取得します。

つまり、当初受益者の父親の死亡時に第2受益者及び
第3受益者ともに、受益権を取得したと解釈されるので
当初受益者の父親に母親・長男以外に相続人がいる場合、
遺留分の請求は当初受益者の死亡時に行うことが必要

なります。

遺留分の問題は、当初受益者の死亡時において算定・清算されているので
第2受益者の母親が死亡した時点では他の相続人は第3受益者の長男に対して、
遺留分の請求はできないと言われてます。

ただ、最高裁判所の判例がない以上、第2受益者の死亡時に
おいても遺留分の対象になる可能性がありますので、
実際の組成時には遺留分の対象になることを前提とした方が
良いでしょう。

受益者連続型信託の注意点2
終了時期~30年ルール

受益者連続型信託が、2代・3代にわたって
財産の承継ができるとしても、永遠に続けることは
できません。
信託法91条では期間の制限を定めています。

第91条  受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

理解するのが難しい文言だと思いますが、
要約すると「信託の開始から30年を経過後に
新たに受益権を取得した受益者が死亡した時点で
信託が終了
」します。

30年経過後は受益権を取得できるのは1人(1回)だけ」です。
「30年+その後に受益権を取得した人が死亡するまで」ですので、
場合によっては70年、80年信託が継続することもあり得ます。

ただ、あまりに長期間にわたって委託者(当初受益者)の
意思によって拘束されてしまうと、家族の状況や
社会状況の変化に対応できないことになりますので、
適切な時期に信託契約を見直していくことが大切
です。

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